皮膚科

症状や悩みの解消・改善はもちろん、皮膚の病気は目に見えますので美容にも配慮して、患者様それぞれのご要望に応じた治療をご提案します。どうぞお気軽にご相談下さい。

湿疹とじんましん

湿疹と蕁麻疹(じんましん)はどう違う?

湿疹・じんましんは、ごくありふれた皮膚の病気で多くの方が聞いたことがあるかと思います。皮膚に「かゆみ」や「赤み」がでる点で湿疹・じんましんの両者は似ていますが、以下のような特徴があり異なる病気です。

 【湿疹】
  • 外的もしくは内的な刺激による皮膚(特に表皮と呼ばれる皮膚の一番外側の部分)の炎症によって、赤み(紅斑)、ぶつぶつ(丘疹)、小さな水ぶくれ(小水疱)などが混ざった皮膚の状態を意味する総称で、多くはかゆみを伴います。
  • 湿疹は皮膚の状態による総称ですので、いろんな皮膚の病気(乾燥性皮膚炎、接触性皮膚炎や刺激性皮膚炎など)が含まれる可能性があります。
  • 徐々に出現し、数日間は続くことが多いです。
  • 一般的な原因としては、皮膚の乾燥、ある物質への接触(洗剤、化粧品、ほこり、金属や汗など)、外的な力(衣服の締め付けによる摩擦など)、薬などがあげられます。
【じんましん】
  • 皮膚の状態として、かゆみを伴い、わずかに盛り上がった発疹(膨疹)と赤み(紅斑)があります。
  • 数時間で出たり消えたりするのが特徴的で、引っ掻いたりしなければ、原則、皮膚に痕(黒くなるなど)は残ることはありません。数時間すると身体の別の部分に出現することもあります。
  • 多くは2週間程度症状が継続する急性じんましんですが、なかには6週間以上続いて慢性じんましんとなってしまうこともあります。
  • じんましんは、アレルギー反応である可能性もゼロではありませんが、ほとんどの場合は特定のアレルゲン(アレルギー反応の原因物質)が存在しない、非アレルギー性の反応によるものです。
【治療について】
  • 湿疹
    • 基本的な治療として、炎症を抑える目的で湿疹のひどさや塗る部位に応じて弱い~強いステロイド外用薬が用いられます。
    • 原因の関与が疑われる場合は、その原因を避けることが重要です(洗剤が原因として疑われる場合、手袋をして洗い物をするなど)。また、皮膚に乾燥があれば保湿剤も併用されます。
    • かゆみが強い場合(夜かゆくて起きてしまうなど)、一時的に抗ヒスタミン薬(眠気の出にくいもの)の内服も併用されることがあります。
  • じんましん
    • 基本的な治療として、抗ヒスタミンH1受容体拮抗薬(眠気の出にくいもの)の内服が用いられます。
    • 急性じんましんであれば、2週間程度の内服で済むことが多いですが、慢性化してしまった場合は数カ月から数年内服が必要となることがあります。
    • 抗ヒスタミンH1受容体拮抗薬1種類だけで治りにくい場合は、抗ヒスタミンH1受容体拮抗薬を増量もしくは2種類用いたり、さらに抗ヒスタミンH2受容体拮抗薬、抗ロイコトリエン薬やトラネキサム酸の内服を併用することがあります。それでも治りにくく日常生活に苦しむ場合は、注射薬で治療することもあります。
    • じんましんは、放置すると悪化して治りにくくなることが知られているため注意しましょう。

水虫

色々なタイプの水虫

水虫は「白癬菌」と呼ばれる真菌(カビの一種)による皮膚の感染症で、ごくありふれた皮膚の病気です。

【水虫のタイプ】

水虫のタイプは、症状のある部位と皮膚の状態に応じで以下のように一般的に分類されまます。なお、複数の水虫を同時に発症している方も中にはみえます(例えば、爪白癬と足白癬など)。

  • 趾間(しかん)型足白癬
    • 足の指の間(趾間)が赤くなったり、カサカサし皮がむけたりする水虫。
    • 患部から浸出液(皮膚の傷口からでる液体で、主に血液の血漿と呼ばれる成分からなります)が出てジュクジュクしたり、痒みが強いことが多い。
  • 角質増殖型足白癬
    • 足の裏~側面にできる水虫で、特にかかと部分の角質が厚く、ザラザラしてくるもの(過角化)。時にひび割れて痛みが生じることもある。
    • 基本的に痒みなどの自覚症状がないことが多い。
  • 小水疱型足白癬
    • 足の裏や縁にプツプツとした2-3㎜程度の小さな水ぶくれ(小水疱)ができ、通常、強い痒みを伴う。
  • 爪白癬
    • いわゆる「爪水虫」のことで、足の爪が厚く白っぽく濁る。手の爪にもできることがあります。
    • 症状が進むと爪の色が黄色や黒色に変色し、爪が脆くなってボロボロと崩れやすくなる。
  • 体部白癬
    • 一般的に「たむし(ぜにたむし)」と呼ばれるもので、足や頭を除いた体の皮膚に円形~楕円形に皮がむけて、周辺が赤み(紅斑)を帯び、小さな水ぶくれ(小水疱)で辺縁を取り囲まれ、中心部がやや治ってきたようにみえるのが特徴。
  • 頭部白癬
    • 一般的に「しらくも」と呼ばれるもので、頭皮の皮がめくれてきて、髪の毛が抜けてくる落屑斑型(脂漏型、シラクモ型とも呼ばれます)、頭皮の毛穴のところに髪の毛がとぐろを巻いた黒点にようにみえる黒点型、毛穴の周囲に炎症を伴い赤み(紅斑)が強く、時に浸出液を伴いジュクジュクし髪の毛が抜けてくるケルスス禿瘡(「とくそう」と読みます)型に頭皮・髪の毛の状態に応じて分類されます。柔道などの格闘技を行っている方に見られることが多いと言われています。
【水虫の検査】
  • 真菌検査
    • かゆみの症状や皮膚の状態だけでは、湿疹やかぶれなどとの鑑別が専門医でも難しいため、診断を確定するために、患部の皮膚や爪の一部分、もしくは髪の毛を顕微鏡で確認することが必ず必要となります。この検査では、患部の皮膚や爪を少量こすりとったり、髪の毛を抜いて顕微鏡で白癬菌の有無を調べます。なお、爪白癬においては、顕微鏡検査で白癬菌が見つからないものの、爪の状態として疑わしい場合は、デルマクイック爪白癬という迅速検査キットにて免疫学的に白癬菌の確認を補助的に行うこともあります。
【水虫の治療】

 基本的に抗真菌薬の塗り薬で治療しますが、各病型によって抗真菌薬の内服薬を優先的に使用したり少し治療方針が異なります。

  • 趾間型および小水疱型足白癬
    • 抗真菌薬の塗り薬が基本ですが、土踏まず含めた足の裏全体~足の指の間、そして足の指の背、足の縁、かかとの上まで症状のない部分含めて全体的に塗るのが治療のポイントです。
    • 水虫の症状がなくなっても最低1カ月は塗ることが再発予防の観点から推奨されています。
    • 抗真菌薬の塗り薬はクリームタイプが多いですが、ジュクジュクした部位に塗るとクリーム自体の刺激によって刺激性皮膚炎をおこしますので、その際は軟膏タイプの塗り薬を使用します。
    • セルフケアも重要です。足は毎日洗い、しっかり拭いて乾燥させましょう。足を蒸らさないことも重要で、毎日きれいな靴下を履き、汗をかいたら靴下を履き替えたり、履いた靴は乾燥させるなどして毎日同じ靴を一日中履くのを避けましょう。
  • 角質増殖型足白癬
    • 治療の基本方針は他の足白癬と同様に塗り薬です。
    • ただし、塗り薬だけでは治りにくいことが知られており、抗真菌薬の内服薬が通常併用されます。
    • 抗真菌薬の内服には、採血検査が定期的(通常、内服開始前、その1か月後、それ以降は2か月ごとのペース)に必要となってきます。
  • 体部白癬
    • 治療の基本方針は小水疱型や趾間型足白癬と同様に塗り薬となります。
    • 塗り薬が塗りにくい部位(背中など)や広範囲に外用する必要がある場合などには、抗真菌薬の内服薬も併用も考慮されます。なお、抗真菌薬の内服には定期的な採血が必要となります。
  • 爪白癬
    • 爪白癬の治療は、治癒率の高さから基本的に抗真菌薬の内服による治療が優先され、定期的な採血が必要となります。
    • 薬の飲み合わせの観点から内服が難しい場合や肝臓に病気などがあり内服薬が適さない場合は、塗り薬で治療しますが、治療期間は約1年程度と通常内服での治療よりも長くかかります。
  • 頭部白癬
    • 頭部白癬の治療は、塗り薬の効果が乏しいため、基本的に使用せず、抗真菌薬の内服にて治療し、内服中は定期的な採血が必要となります。

アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎ってなに?

日本皮膚科学会ではアトピー性皮膚炎は、悪くなったりと良くなったりを繰り返すかゆみのある湿疹を主な皮膚症状とする疾患のことで、患者さんの多くは「アトピー素因」を持っていると定義されています。

ここで、「アトピー素因」とは、ご家族やご自身に喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎そしてアトピー性皮膚炎のいずれかの既往があること、もしくは、IgEと呼ばれる抗体を産生しやすい素因があることとされています。

【アトピー性皮膚炎の診断基準】

●世界的には1980年に作られたHanifin & Rajkaの診断基準が一般的ですが、日本ではより簡便な日本皮膚科学会の診断基準が広く使用されています。

●日本皮膚科学会の診断基準では、①かゆみ、②特徴的な湿疹と湿疹が出ている部位の分布、③慢性的な繰り返す皮膚症状(乳幼児では2か月以上、その他の小児、青少年、成人では6カ月以上)の3つを満たすことでアトピー性皮膚炎と診断します。

●アトピー性皮膚炎の診断においてアレルギーの存在が必須になっていないように、アレルギーの病態が存在しないアトピー性皮膚炎もあることに注意しましょう。

【アトピー性皮膚炎の湿疹の特徴】

●アトピー性皮膚炎の急性期の湿疹の特徴として、赤み(紅斑)、浸出液(傷口から出る液体のことで、主に血液中の血漿とよばれる成分からなります)によってジュクジュクした皮膚、皮膚のぶつぶつ(丘疹),ささくれだって皮膚が小さくむけてくる(鱗屑)、浸出液が乾いてできた塊(痂皮)があげられます。

●アトピー性皮膚炎の慢性期の湿疹の特徴として、触るとやや硬く触れる赤み(浸潤をふれる紅斑)、ゴワゴワして硬く盛り上がった皮膚(苔癬化)、やや大きめで硬くて丸い皮膚の盛りあがり(痒疹)、ささくれだって皮膚が小さくむけてくる(鱗屑)、浸出液が乾いてできた塊(痂皮)があげられます。

●これらアトピー性皮膚炎に特徴的な湿疹の出方には特徴があり、まず左右対側性に出てくることがあります。また、湿疹のできやすい部位として、額、眼のまわり、口のまわり・くちびる、耳とその周囲、首まわり、手足の関節の折れ曲がった部分やお腹や背中があります。なお、年齢によって湿疹のできやすい部位は変化もします。

【治療の原則とその目標】

 ●アトピー性皮膚炎は遺伝的素因以外に、内的・外的要因も絡んだ病態が潜んでいるため、お薬だけで症状をコントロールするのは難しいと言われています。

●アトピー性皮膚炎の治療には、その重要な病態に応じて、①お薬による治療、②皮膚のバリア機能異常(乾燥肌)に対する適切なスキンケア(保湿剤の使用)、③悪化因子(汗やホコリなど)の検索とその対策の3つが治療の原則とされています。

●なお、患者さんが次のような状態になることを治療のゴールにするように日本皮膚科学会のガイドラインにて推奨されています。

①症状はないか、あっても軽くて日常生活に悩むことがなく、お薬による治療もあまり必要としない状態を維持できている。

②ごく軽いまたは軽い症状は続くものの、日常生活に悩むような急な悪化はない状態が維持できている。

【アトピー性皮膚炎の治療に使われる炎症を抑える外用薬】

●アトピー性皮膚炎の治療おいて、基本となるのが塗り薬です。近年、複数のステロイド以外の塗り薬も日本で登場してきており、治療の選択肢が増えてきています。そして、一度湿疹がきれいに治っても、湿疹ができやすい部位(額や首などに)に、週に2回など定期的にステロイド外用薬などを予防的に塗ることで皮膚がきれいな状態を維持しやすいことがわかっており、これをプロアクティブ療法と呼びアトピー性皮膚炎の維持療法として確立されています。

●また、塗り薬だけではコントロールが難しい場合は、免疫を抑える内服薬や注射薬も併用します。これら内服薬や注射薬の選択肢も近年徐々に増えてきており、アトピー性皮膚炎をコントロールしやすい医療環境が整ってきています。

●なお、塗り薬は塗る量が少ないと期待された効果がでないことが知られていますので、塗り薬を人差し指の指先から第一関節まで出したら、手のひら2枚分程度に延ばすことが適量とされていますので注意しましょう。

1)ステロイド外用薬

 アトピー性皮膚炎の湿疹の炎症を抑える目的で使用されます。日本では5段階にステロイドの強さが分かれていますが、塗る部位や湿疹のひどさに応じて適切な強さのステロイド外用薬が処方されます。ステロイドの副作用が怖いと思う方がいるかもしれませんが、定期的に皮膚の状態を医師に見てもらいながら適切な強さのステロイド外用薬を正しく使うことで、安全に使用することができます。

 2)非ステロイド系消炎外用薬

 炎症を抑える力は極めて弱く、また接触性皮膚炎(かぶれ)を生じるリスクが知られています。アトピー性皮膚炎の治療目的での使用(つまり、抗炎症外用薬としての使用)としては、既に推奨されなくなっています。

 3)カルシニューリン阻害外用薬(タクロリムス軟膏)

 ステロイドではない炎症を抑える外用薬です。薬剤の有効成分の分子量が比較的大きい性質上、塗っても皮膚の下まで薬効成分が透過しにくいため、比較的皮膚が薄い部位である顔や首などに一般的に使われます。塗り始めの数日間はヒリヒリと刺激感がでることが知られていますが、症状の改善とともに刺激感も消えてきます。炎症を抑える効果としては普通の強さのステロイド(5段階中の3)と同等とされています。

 4)JAK阻害外用薬(デルゴシチニブ軟膏)

 近年登場したステロイドではない炎症を抑える外用薬です。ステロイド外用薬でみられる皮膚に対する副作用(皮膚がうすくなってしまうことなど)が見られず、またタクロリムス軟膏でみられる刺激感も少ない塗り薬です。タクロリムス軟膏の互換とする位置づけとされることが多いですが、比較的新しい薬のため他の外用薬と比較したデータが不足しており、今後のデータの蓄積が待たれます。

 5)PDE4阻害外用薬(ジファミラスト軟膏)

 デルゴシチニブ軟膏の後に登場した第4の抗炎症外用薬とされています。デルゴシチニブ軟膏同様、ステロイド外用薬でみられる副作用やタクロリムス軟膏でみられる刺激感も少ない塗り薬です。デルゴシチニブ軟膏と同じ位置づけとされることが多いですが、こちらも新しい薬のため他の外用薬と比較したデータが不足しており、今後のデータの蓄積が待たれます。

【お薬以外で大切なこと】

 アトピー性皮膚炎の治療をする上で、悪化因子を調べ、その対策をすることも大切なことです。汗やホコリ、衣服の注意点(綿の下着など)、からだの優しい洗い方など一般的な注意点の他に、網羅的な一般アレルギー採血検査もよく行われます。

ただし、アレルギー採血の結果のみでもって悪化因子とすぐに判断するのは間違いで、実際に悪化するかどうか普段の生活と照らし合わせて確認する必要があります。

なお、乳幼児の食物アレルギーの確定診断には、過度な除去はかえって成長障害を招くリスクや事例が知られており慎重に行う必要があるため、採血結果だけでミルクなどを除去するのではなく、専門機関で確認テストを受けた上で専門とする医師の指導のもとに行う必要があることに注意しましょう。

ニキビと脂性肌

ニキビってなに?

ニキビは、皮膚科の正式病名は「ざ瘡」(ざそう)で、一般的には「吹き出もの」とも呼ばれているものです。

ニキビは、皮脂(皮膚から分泌される油分)の分泌が増えるとともに、皮脂の出口でもある毛穴周りの皮膚が異常な角化によって閉じることで、毛穴に皮脂が溜まってブツブツと膨らんできます(このブツブツを面皰(めんぽう)と皮膚科的に呼びますが、「白ニキビ」とも呼ばれます)。

さらに、本来は皮膚で悪さをせずに大人しくしているアクネ菌がそのブツブツした皮脂の中で増殖することで炎症をおこして赤く腫れてきたり膿をもったりします(この状態を「赤ニキビ」と呼びます)。

「ニキビは青春のシンボル」として昔は、医療機関を受診せずに放置されることもあったのですが、今や早期に治療することで、ニキビ痕が残りにくいことがわかっていますので、早めに医療機関を受診して適切な治療をうけましょう。

なお、赤ニキビの状態を放置しておくとニキビ痕が残ってしまい、このニキビ痕を治すには、自費診療になってしまうだけでなく、きれいに元に戻すのは難しいので注意しましょう。

【にきびのスキンケアなど】

2023年度版の日本皮膚科学会のガイドラインにて紹介されているスキンケアや食生活について紹介します。

●洗顔は皮脂を洗い流す目的で1日2回が推奨されています。

●どの洗顔剤がよいかということに関しては、スクラブ入りや殺菌作用のある洗顔剤の有効性はまだ確立されていないため、今後の研究が必要です。

●なお、オイルクレンジングがニキビを悪化させる科学的な根拠はないので注意しましょう。

●基本的なスキンケアに関して、低刺激でニキビ用の基礎化粧品(ノンコメドジェニックと表示されているもの)の使用が推奨されています。

●また化粧についても、原則禁止ということはなく、同じくノンコメドジェニックと表示があるニキビ用の化粧品を用いた化粧については許容されています。

●食事(ナッツやカカオ、砂糖など)については一律に制限することは、エビデンスが乏しいことから、もはや推奨はされていなくなっています(低GI食も推奨されていません)。

●極端な偏食を避けて、バランスのよい食事を心がけましょう。この点は、2024年度版の米国皮膚科学会から出されているガイドラインでも同様の見解です。

【ニキビの治療】

ニキビの治療は、基本的に悪化してきた初期の急性炎症期(赤ニキビが目立つ時期)と治って軽快してきた維持期(赤ニキビはわずかで、白ニキビが主体)で方針が異なり、また急性炎症期は重症度に応じて治療方針が異なります。

なお、日本の基準では、次のように急性炎症期の重症度は分類されています。

  1. 軽症:顔の半分に赤いニキビが5個以下
  2. 中等症:顔の半分に赤いニキビが6~20個
  3. 重症:顔の半分に赤いニキビが21~50個
  4. 最重症:顔の半分に赤いニキビが51個以上

急性炎症期:
治療期間は3か月までとされています。

●軽症+白ニキビ(面皰):クリンダマイシン+過酸化ベンゾイル配合外用薬とアダパレン+過酸化ベンゾイル配合外用薬が上位の推奨度で挙げられ、また、アダパレン外用薬と抗菌外用薬の併用や過酸化ベンゾイル外用薬のみ、アダパレン外用薬のみが主な治療選択肢となってきます。

●中等症+白ニキビ(面皰):中等症からは、上記の軽症の治療方針と同様です。ただ、治療選択肢に、抗菌外用薬を使用していなければ、抗生剤の内服(ドキシサイクリンが第一選択とされています)の併用療法が治療選択肢として入ってきます。

●重症・最重症+白ニキビ(面皰):重症以上からは、抗生剤の内服とアダパレン+過酸化ベンゾイル配合外用薬の併用療法が上位の推奨度として挙げられ、その次に抗生剤の内服とアダパレン外用薬の併用療法が続き、基本的に抗生剤の内服が必要となってきます。

●漢方薬、ケミカルピーリング、アゼライン酸の外用は、上記の治療が効果に乏しい、もしくは副作用などで選択できない場合に考慮される選択肢とされ、治療の基本方針とならないことに注意しましょう。

●経口避妊薬(エストロゲンとプロゲステロン配合薬、いわゆるピル)については、日本においては原則推奨されていません(アメリカでも、ピルのにきび治療への使用は条件付きの推奨度どまりとなっています)。

●各種ビタミン剤の内服についても、にきび治療としてはもはや推奨されていませんので注意しましょう。

維持期:
基本的に毛穴のつまりを改善する作用をもった外用薬で治療します(抗菌作用しかもたない外用薬は使用わないことになります)。

●過酸化ベンゾイル外用薬のみでの治療、またはアダパレン外用薬のみでの治療が上位に推奨され、アダパレン+過酸化ベンゾイル配合外用薬も治療選択肢となっています。

●維持期には抗菌外用薬の使用や抗生剤の内服は、推奨されていませんので、急性炎症期後も漫然と抗菌薬を使い続けるのは止めましょう。

脂漏性皮膚炎(フケ・かゆみ)

脂漏性皮膚炎ってなに?

脂漏性皮膚炎(しろうせいひふえん)は、からだの中で皮脂が多い部分(顔の眉毛、小鼻の周りや耳の穴の周り、頭皮、胸や背中、脇の下、股の部分を指し、これらを総称して脂漏部位と呼びます)に生じる、カサカサして皮がめくれて皮膚が赤くなってくる病気です。

かゆみは、あまり強くないことが多いですが、頭皮の脂漏性皮膚炎は、フケを伴い、かゆみが強くなる傾向があると言われています。

皮脂の分泌が活発になる乳児期(通常、1歳頃までの一過性に終わります)と40~50代の中高年期に多いとされます。

【脂漏性皮膚炎の原因】

 脂漏性皮膚炎の原因としては、皮脂の分泌亢進(体質的な要因やストレスなどで亢進されます)とその皮脂を食料として増殖するマラセチア菌と呼ばれる酵母様真菌(カビ)の増殖が原因とされています。

なお、マラセチア菌自体は、普段から人の皮膚に住んでおり、特に悪いものではありませんが、増殖した際に皮膚に炎症を起こす原因となります。

【脂漏性皮膚炎の治療】

一過性に終わる乳児期の脂漏性皮膚炎と、中高年に多い成人期の脂漏性皮膚炎で、治療方針が異なります。

乳児期の脂漏性皮膚炎:

●乳児の場合、生後3か月頃から自然に皮脂の分泌亢進が落ち着いて軽快してきますので、皮脂に対するスキンケア(適切な洗顔や洗髪)をまず行って軽快するか経過を観察します。

●毎日洗っても症状が出ている場合は、皮脂が十分に洗い流せてない可能性があります(特にベビー用洗剤は肌に優しい分、洗浄力が落ちます)。その際は、あえて固形石鹸など洗浄力の強いもので皮脂が多い部分だけを洗うようにしましょう。

●また、頭皮などに厚いかさぶた状のものがついて洗っても落ちない場合は、無理にはがそうとせずに入浴の10分ほど前にベビーオイルをつけてふやかしておき、入浴中に優しく(指の腹などで)少しずつ洗い落とすようにしましょう。

●洗った後は、保湿剤をつけるのも忘れないようにしましょう。

●なお、スキンケアを行ってもなかなか改善しない場合には、弱いステロイド外用薬を短期間使用することもありますが、基本的に成人と違って抗真菌薬外用薬は使用しません。

成人期の脂漏性皮膚炎:

●成人の場合は、慢性化しやすいため長期的な管理・治療が必要となってきます。

●治療の中心は、抗真菌薬であるケトコナゾール外用薬であり、炎症が強いときは一時的にステロイド外用薬を併用しますが、ステロイド外用薬中止後に症状が戻ってくることが多いと言われ、炎症が落ち着いた後もケトコナゾール外用薬をある程度継続的に使用することになります。

●なお、先にステロイド外用薬だけで炎症を抑えて、その後ケトコナゾール外用薬に切り替えることもあります。

●また、抗真菌作用のあるミコナゾール配合されたシャンプーなども市販されており、有効とされています。

とびひ

「とびひ」ってなに?

とびひは、皮膚科での正式病名は「伝染性膿痂疹」(でんせんせいのうかしん)と言います。これは、黄色ブドウ球菌や溶血性連鎖球菌(溶連菌)など、細菌が原因でおこる皮膚の感染症の一種です。

●さわることによってうつり、火事の飛び火のようにあっと言う間に全身に広がることから、例えて“とびひ”と言われます。

●あせも、虫刺され、湿疹などをひっかいたり、転んでできた傷から細菌に感染し、とびひになります。 

●鼻をいじる癖があるお子さんは、その手で虫刺されなどをひっかくことで、感染しやすくなります。

とびひは皮膚症状の違いから次の2種類に分類されています。

【水疱性膿痂疹】 

水疱(水ぶくれ)ができて、びらん(皮がむけて汁がでる状態)をつくるタイプで、乳児期~学童期に多く、夏によくみられます。

●「黄色ブドウ球菌」が原因で、この細菌が作り出す毒素によって皮膚に水ぶくれやびらん症状がおきます。

●発熱などの全身症状はないことが多く、あっても軽度です

●通常、顔や手足など露出部から始まり、特に鼻周りや耳周りから始まることが多いです

●通常の抗菌薬が効きにくいメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)が感染することもあります

痂皮性膿痂疹】 

 水疱性膿痂疹で見られる水疱(水ぶくれ)はなく、皮膚の赤み(紅斑:こうはん)や赤いぶつぶつ(丘疹:きゅうしん)そして、膿をもった小さいブツブツ(小膿胞:しょうのうほう)、びらん、かさぶたや黄色の浸出液(傷口からでる主に血液の血漿とよばれる成分からなる液体)が固まったもの(痂疲:かひ)が特徴です。

また、水疱性膿痂疹と異なり、季節に関係なく年間を通じてみられ、子どもに多いといったこともありません。

●溶連菌が原因とされることが多いですが、実際は溶連菌の単独での感染はほとんどなく、黄色ブドウ球菌との混合感染がほとんどです。溶連菌が感染している場合は、とびひが治った後に腎炎を起こすことがあるので注意してフォローが必要です。

●発熱や咽頭痛、リンパ節の腫れや痛みなどの全身症状を伴うことが多く、この点が水疱性膿痂疹と異なります。

 【生活について】
●手洗いと、爪切りはこまめにしましょう。また鼻をいじる癖は控えるように指導しましょう。

●お風呂の水は汚れていることもあり、シャワー入浴を基本的に推奨しますが、ご家族の中で最後に入るのであれば、湯船につかるのは差し支えありません。また、患部はしっかり石鹸の泡で洗いましょう。

●プールや銭湯の利用は、皮膚が治るまで控えましょう。(皮膚症状が広い範囲に及ぶもしくは、発熱など全身症状なければ、学校を休む必要はありません)

●患部をいじらないように、また他の人にうつさないように、処方された薬を塗った後はガーゼで覆いましょう。

 【とびひの治療】 

 基本的に治療の開始前に、患部から検体を採取して感染している細菌を同定し、抗生剤に対する感受性を調べる検査を行います(結果が出るのに1-2週間かかります)。

●とびひの治療は細菌の検査結果が得られるまで待てませんので、ただちに開始されます。

●なお、とびひの治療は、皮膚症状が狭い範囲であれば抗菌作用のある外用薬で、広い範囲であれば抗生剤の内服を基本とします。

狭い範囲のとびひ:

●患部を石鹸の泡で洗った後、抗菌外用薬(ゼビアックス油性クリームやアクアチム軟膏などキノロン系外用薬もしくは、フシジン酸ナトリウムなどが用いられます)を塗ってガーゼで保護します。

●ゲンタシン軟膏は、多くが耐性をもってしまったため、近年はとびひの治療ではあまり使われていません。

●消毒に関しては、正常な細胞にも毒性があり治癒の妨げになること、刺激作用もあり、かぶれを起こすリスクもあることから、基本的に不要です。

●浸出液が多い場合は、亜鉛華軟膏をガーゼやリント布に塗って患部を追加で保護します。

●湿疹がとびひのベースにある場合は、ステロイド外用薬も同時に使用し根本的な原因にも対処します。

広い範囲のとびひ(発熱など症状が重い場合も含む)

●上記の外用治療に加えて、抗生剤の内服が必要となってきます。

●水疱性膿痂疹の場合は、セフェム系やペニシリン系抗生剤が主に使用され、MRSAによるものと判明した際には感受性結果に応じて抗生剤を変更します(ホスホマイシンやファロペネムがよく使用されますが、ST合剤や8歳以上ではミノマイシンも選択肢になります)。

●痂疲性膿痂疹の場合は、ペニシリン系が主に使用されますが、溶連菌と黄色ブドウ球菌の混合感染が多いため、ベータラクタマーゼ阻害剤配合ペニシリンやファロペネムが主に用いられます。溶連菌感染後の腎炎の発症を抑制する目的で、最低10日間の内服が必要となります。

みずいぼ

「みずいぼ」とは?

 「水いぼ」は、ウイルスが原因でおこる皮膚の病気で、幼稚園~小学校低学年の児童によく見られるもので、皮膚科での正式病名は「伝染性軟属腫」(でんせんせいなんぞくしゅ)と言います。

皮膚に特徴的な小さくて、光沢のある丸いブツブツができます。通常初期は、かゆみや痛みはありませんが、時間が経ってくるとモルスクム反応とよばれる免疫反応が起こることがあり、水いぼ自体も赤みを帯び、周囲も赤くなり、かゆみを伴って湿疹様の変化を起こすことがあります。

水いぼは、自然治癒するものなので様子をみましょうとされることもありますが、治るまでに約半年~3年程度かかるといわれており、その間に全身に広がって数十~百個以上になってしまい、また他のお子さんにうつすリスクを考えて、日本の皮膚科では一般的に早期に摘除することが勧められています。

【水いぼの治療】

 水いぼは、ピンセットなどで水いぼをつまんで取る方法が一般的です。

●水いぼをとる処置は痛みを伴いますので、処置前に局所麻酔のお薬(リドカイン)がついたペンレステープを使うことが大切です。実際には、処置の約1時間前にペンレステープ(8-16分割して小さく切ったもの)を水いぼに貼ってから処置します。(適切な鎮痛効果を得るためには、密着させることが大切なので、剝がれそうな場合にはガーゼ用テープで補強します)

●水いぼを取った後は、キズになっていますので、通常ゲンタシン軟膏などを塗ってガーゼや絆創膏で保護します。

●その他の治療法として、液体窒素で治療する方法などがありますが、確実に治るまでに時間がかかってしまうことなどから、上記の水いぼをとる方法が基本となります。

【生活上の注意点】

●お風呂やプールの水を介して他の人にうつすことはありませんので、お風呂やプールに入っても問題ありません。ただ、水いぼの中身が皮膚についてしまうと感染するので、肌が直接触れあう遊びや、タオル、浮輪などの共有は避けましょう。

●アトピー性皮膚炎のお子さんが水いぼにかかると、広がりやすいので、注意が必要です。

巻き爪

巻き爪治療についてはこちら(馬場医師紹介ページ)をご一読ください